アナはなぜエルサのドアを叩き続けるのか|『アナと雪の女王』レビュー⑤

  アナは、ディズニー・プリンセスの枠組みを受け継ぐ存在です。彼女は「本当の愛」に憧れているピュアな子で、前向きの愛らしい王女です。そして「背の高くてかっこいい王子様」と偶然に出会い、恋に落ちます。しかしアナは他のディズニープリンセスとは少し違いますね。アナは自分の力で築く未来を抱いながらも、実は欠点だらけです。感情的で不器用ですがメルヘンの世界に憧れている存在。あなたと私、そして私たちの妹のように、毎日の電車で何時でも見られる人です。白雪姫やシンデレラとは大違いの、ごく身近なキャラクターですが私にはとても魅力的で愛らしいです。前作のヒロイン、ラプンツェルの魅力を一層大きくした感じでした。

「Do you want to build a snowman?」
-プリンセスでありながら、ヒーローになろうとするアナ-

http://rebloggy.com/post/my-edits-disney-books-anna-frozen-elsa-arendelle-do-you-want-to-build-a-snowman/70982679163
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  物語におけるアナの成長していく姿はとても大事です。エルサの成長物語に比べてアナの成長物語はわかりやすく描かれています。何処にでもいそうな少女は、理解の深い大人になっていきます。ディズニーアニメーションのプリンセスたちは、無邪気でお人良しの部分が目立ちます。疑いもなく人を信じる彼女たちの純真な心は子供の魂に似ています。アナもそうでした。両親が守る閉ざされたドアの中で暮らしていたときは。  それでは、アナに関する映画の歌の流れからアナがどのように成長していくのかを考えて行きましょう。まずは、アナとエルサの葛藤のはじまりを示すアナの歌「Do you want to build a snowman?(クリステン・ベル、アガサ・リー・モン&ケイティー・ロペス)」ですね。この曲は、3人のアナ(5歳のアナ、9歳のアナ、15歳のアナ)によって歌われました。まるでアナの成長日記みたいですね。アナというキャラクターの性格をよく表した曲だと考えます。それでは一緒に見てみましょう。

「Do you want to build a snowman?(雪だるま作ろう)」歌詞/和訳および解釈

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(5歳のアナ、ケイティー・ロペス)
Do you want to build a snowman?
Come on, let’s go and play
I never see you anymore
Come out the door
It’s like you’ve gone away
We used to be best buddies
And now we’re not
I wish you would tell me why

Do you want to build a snowman
It doesn’t have to be a snowman

(Go away, Anna!)
Okay, bye…

エルサ、雪だるまつくろう?
ねぇ、遊ぼうよ
もう会えないの?ドアを開けてよ!
エルサがもういないみたいだよ
昔はあんなに仲良かったのに
もう違うのかな…
ねぇ、どうしてなの?教えてよ

雪だるま作ろう?
雪だるまじゃなくてもいい

(あっち行ってアナ!)
(わかったよ…)

  死の危機から生き返ったアナは、エルサの魔法の記憶は消されていますが、楽しかった思い出だけは残っています。だから繰り返しエルサを誘います。「雪だるま作ろう?」と。それは、エルサと何かを一緒にしたかった気持ちの表れでありますし、昔のように仲良く遊びたいという気持ちの表れです。前の記事で触れた通り、「雪だるまを作る」ことは、理解と協力の上に成り立つ遊びです。そう考えると、アナは、お互い理解し合ってた心友(Best buddies)であった頃のようになりたくてこの歌を歌っているのかもしれませんね。

 しかしエルサは冷たく断ります。アナはへこんで固く閉ざしているエルサの部屋のドアから去っていきますね。ここで場面は、ちょっと大きくなったアナとエルサに切り替わります。

(9歳のアナ、アガサ・リー・モン)

(ノック)
Do you want to build a snowman?
Or ride our bike around the hall?
I think some company is overdue…
I’ve started talking to
The pictures on the walls
It gets a little lonely
All these empty rooms
Just watching the hours tick by
Tick, tock, tick, tock, tick, tock

雪だるま作ろう?
それとも自転車でも乗る?
もう遅いのかな…
寂しくて絵と話すようになったよ
誰もいない部屋で桂時計を見てたりするんだ
チクタクチクタクチクタクチクタク…

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  エルサなしの一人ぼっちにアナは慣れ始めます。アナはいくらドアを叩いて声をかけても応じないエルサの代わりに、絵の中の人物たちに声をかけ始めます。印象深かったのは、ジャンヌダルクの絵の前で「がんばれよ、ジャンヌ!(hang in there, Janne)」と声かけるシーンです。

  ジャンヌダルクは、百年戦争でフランスを勝利に導いた女性です。アナはディズニープリンセスの系図を引き継ぎながら、同時にお姫様を救うヒーローでもあることがわかります。アナこそがエルサを救い、自分を救い、そしてアレンデール王国を救う存在であるという伏線のように思えました。

  「頑張れよ」と訳できる「Hang in there」は、諦めそうになっていいる人、ひどく落ち込んでいる人を励ますときに使われることが多いです。砕けそうになる自分を励ます言葉でもあると思いますね。10年もドアを叩き続けても応じないエルサですが、アナはこれからもドアを叩き続けるでしょう。そうするためにジャンヌダルクに自分をかけて、 「Hang in there」と声かけるのではないでしょうか。

 私は「it gets a little lonely」と歌うところの声が好きですね。辛い気持ちを飲み込むような声といいましょうか。アガサ・リー・モンは全体的にクリアでかわいらしい声の持ち主ですから、ちょっと詰まった感じの声の出し方によって、上手くアナの感情を伝えてくれるような気がしました。

 そして両親が亡くなる場面が流れますね。ゆっくりしたテンポと低い音色の楽器を通じて切ない雰囲気を作り上げています。そしてお葬式の後の場面に切り替わります。アナは相変わらずエルサの部屋の前です。いつももより元気がなく悲しそうな顔をしています。

(15歳のアナ、クリステン・ベル)

Please, I know you’re in there
People are asking where you’ve been
They say have courage
And I’m trying to
I’m right out here for you
Please let me in

We only have each other
It’s just you and me
What are we gonna do?
Do you want to build a snowman?

エルサ、お願い
そこにいるんでしょう?
みんなお姉ちゃんのこと心配してるよ…
私はね、
「頑張って」って言われるからそう振舞おうとしてるよ
私はここにいるから
お願いエルサ、ドアを開けて…

もう私たち二人しかいないじゃない…
お姉ちゃんと私だけ
これからどうすればいいの?わからないよ…
雪だるま作ろうよ、エルサ…

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  一つのドアに背を向けて違う方向を見ているエルサとアナ。静かなピアノの音と力を抜いたボーカル、歌を聴いている今でもアナの切なさが蘇って涙が出そうです。

 3歳の子供が15歳になるまでの長い月日、アナはずっと諦めずにエルサのドアを叩き続けました。絶対開かないということを知っていながらも「もしかしたら開けてくれるかもしれない」という希望を捨てられないアナ…彼女は自分を拒絶するエルサがいつか自分の中に入って来て欲しいと思っています。そのためいつかエルサが準備ができたときにいつでも入ってこれるように自分だけでも心のドアを閉ざさずにずっと開けて待っているのです。このようにアナはエルサを理解する準備ができています。

 アナは元気いっぱいで、何回転んでも必ず立ち直る強さを持っています。アナの愛おしさは、彼女の不器用な積極性にあると思います。しかしアナも幼くて弱い一人の人間でもあります。訳もわからず拒まれ続けた15年間、アナが感じただろう孤独感は想像を超えるでしょう。エルサを憎む代わりに、自分を責めて来たのかもしれません。

 なぜエルサのドアは開かないのでしょうか。前の記事で紹介したように、アナはエルサ(エルサの特別さ、能力)を理解していないからでした。頭を打って死にかけたあの日、アナはトロールたちに記憶を消されました。そのときエルサとの間の秘密(エルサの能力)を忘れてしまいました。エルサの能力で頭に怪我をしたアナは髪の毛の一部分白く色が抜けていますが、彼女はそれが生まれつきだと思っています。エルサが無意識にアナを傷つけたように、アナも無意識にエルサを理解することができなくなりました。二人のギクシャクは「お互い理解し合うこと」が取り除かれたのが原因なのです。

 エルサの能力を隠して抑制しようとする王と王妃を考えると、本当にエルサを理解できたのは小さい頃もアナだけだったように思えます。後に怖さで暴走したエルサが再びアナを傷つけたときも、アナはそれがただの事故であることを知っています。アナの心のドアはいつもエルサに開かれており、エルサを理解できるのはアナしかいないことを示しているのでしょう。そのため、エルサのドアを開けられるのも、エルサをアレンデールに連れ戻し、王国の平和を守るのもアナでなければならないのです。

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アナはなぜエルサのドアを叩き続けるのか|『アナと雪の女王』レビュー⑤” への12件のフィードバック

  1. 毎回、素敵なブログをありがとうございます!
    いつも、読みながら色々と考えさせられ、アナと雪の女王の世界がより自分が思ってより深く広がりのある映画なのだと気付かされます!
    アナとエルサが2人でドアの両側に立っているシーンには思わずうるっときてしまいますよね!
    エルサを真に理解できたのは昔からアナだけだったのですね!

    1. wakawaka4uさん
      いつもありがとうございます。wakawaka4uさんのコメントにいつも勇気づけられます。
      これからもよろしくお願いします!

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