エルサが誤った愛を見せるのはアナに傷付けた幼いころのトラウマによるものです。エルサがこのトラウマから自由になれるのは「本当の愛」です。ここではっきりしておきたいのは、この「本当の愛」は、劇的な誰かを通して簡単に得られるものではないということです。
閉ざされたドアを開く力、True Love
愛するということは、とても難しいことです。私たちは毎日のニュースで、歪んだ愛が世の中の人々をどれほど苦しませているのかを見ています。また私や私の周りからも見られます。エルサとアナもそうですね。歪んだ愛によってお互いを傷つけ合っていますから。それを解決するのは、「白馬の王子様」ではありません。エルサとアナ、自らがぶつかっていかなければなりません。誤解や不信、傷つけ合うことを経て、本当の愛を見つけ、愛し合えることができるとき、エルサとアナは救われるのです。
自分に近づくとアナを傷つけてしまうと思っているエルサは、自分を連れ戻しにきたアナを魔法で追い払います。エルサの能力によって作られた雪の怪物は、アナたちに「もう来るな」と警告するだけで、彼らを傷つける気はありません。しかしアナは、エルサが氷の城で無意識に使った魔法によって心臓が傷つき、死の危機を向かいます。昔アナが死にそうになったときにアナを治してくれたトロールたちの言葉を覚えていますか?怪我が心臓じゃなくて頭でよかったと、心臓なら自分たちの力では治せないという言葉を。心臓の怪我は、アナの心の傷を示していると思います。しかしそれらを治す方法はあります。「本当の愛(True Love)」です。

エルサのTrue Love=オラフ?
エルサの気持ちは雪で表れています。雪は、エルサの涙として解釈してもよさそうです。エルサの不安が高まると激しい雪が降ります。また両親を失ったとき、アナが死んだと聞いたとき、エルサの雪を降らせる能力は一時的に止まってしまいます。降っていた雪が止まったまま静止しますね。悲しみが深すぎると涙さえも乾くといいますから。アレンデールから逃げてきたにも関わらず、アレンデールが雪に覆われていることをエルサが知った途端、ものすごい雪が降るのも、映画において、「雪」というものが、エルサがアナのために流した涙であり、愛であることがわかります。
幼いアナがエルサに遊びを誘ったとき、数多い雪遊びの中で「雪だるま」に反応したのも興味深いです。雪だるまをつくるときに、一人で作る人はあまりいないでしょう。誰かと一緒に楽しめる雪遊びですし、協力が必要な遊びです。姉妹の幼頃の雪遊びの思い出は、お互いに理解しあう良き友達であったことを伝えてくれます。
↑幼いエルサとアナによって作られるオラフ
幼い二人は仲良く雪だるまを作ります。雪だるまに人参の鼻をくっつけた後、エルサは雪だるまの後ろにまわって「私はオラフだよ、私はあったかいハグが好きだよ!(Hi! I’m Olaf, and I like warm hugs!)」と言います。エルサはその能力のゆえに一人ぼっちでいることを強いられますが、温かい抱きしめ、関心、理解が恋しかったのでしょう。アナはオラフに抱き付いて「オラフ、大好き(I love you, Olaf.)」と言います。雪だるまオラフはもう一度作られます。エルサがアレンデールから逃げて北の山に向かう時です。自分の能力を閉じ込めるためにはめていた手袋をはずして無意識にオラフを作るのです。過去の自分にさようならを告げながらも、アナを思うエルサの気持ちだったのではないでしょうか。魔法で作られたオラフには、なぜか鼻がありません。オラフに言わせると「ユニコーンみたい」な人参の鼻を作ってオラフを完成させるのはアナでなければなりません。オラフがアナとエルサの愛から創られた存在であることの証です。オラフは単なるお笑い担当ではなく姉妹の深い愛情を表せるキャラクターであることがわかります。オラフは物語の中でずっとアナに格別な愛情を示していますし、エルサと共に冬に属すべき特別さをもって生まれています。
↑アナとクリストフのところに現れ、アナによって完成されるオラフ。
オラフがアナとクリストフ、トナカイのスヴェンの仲間に加わるのは、アナが冬の美しさに感動しているときでした。ディズニーの映像はとても色鮮やかで、神秘的で、映画の始まりの歌「Frozen Heart」が描いている「氷の美しさ」を見事に再現しています。そこにかわいい雪だるまが現れ、自分のことをオラフだと紹介するのです。自己紹介の言葉は、幼いアナとエルサがオラフを創ったときと同じく、「私はオラフだよ、わたしはあったかいハグが好きだよ!(Hi! I’m Olaf, and I like warm hugs!)」です。オラフは雪だるまなのに夏に憧れ、アナと共に冬を終わらせるためにエルサを探す旅に加わります。エルサの居場所を教えてくれるのもオラフです。
表面上はアナから逃げているエルサですが、実は、ドアを開けてアナを迎えたかったエルサの気持ちがオラフとして現れたのではないでしょうか。それでは、オラフのソロ曲、「In summer」を見てみましょう。
「In Summer」を通して表される葛藤の解決法

In summer(ジョシュ・ギャッド)歌詞/和訳(くらら)
Bees’ll buzz, kids’ll blow dandelion fuzz
And I’ll be doing whatever snow does
In summer
A drink in my hand, my snow up against the burning sand
Prob’ly getting gorgeously tanned
In summer
I’ll finally see a summer breeze blow away a winter storm
And find out what happens to solid water when it gets warm
And I can’t wait to see what my buddies all think of me
Just imagine how much cooler I’ll be
In summer
Da da, da doo, ah, bah, bah, bah, bah, bah, boo
The hot and the cold are both so intense
Put ‘em together, it just makes sense
Ratdadat, dadadadoo
Winter’s a good time to stay in and cuddle
But put me in summer and I’ll be a happy snowman
When life gets rough I like to hold onto my dream
Of relaxing in the summer sun, just letting off steam
Oh, the sky will be blue, and you guys’ll be there too
When I finally do what frozen things do
In summer
In summer!
Oh, the sky will be blue, and you guys’ll be there too
When I finally do what frozen things do
In summer
In summer!
ハチはぶんぶん飛んで、子供たちはタンポポの綿帽子を吹き放つ夏、
僕は片手にドリンクを持って、熱い砂浜の上で雪の仕事をする
かっこいい日焼けをするだろう
暖かくなると氷がどうなるかもわかるだろう!
もう待てないよ!友達はどんな顔をするのかな?
夏の日、僕がどんなにかっこよくなるか考えてみようぜ
熱さと寒さは真逆!だから混ぜてしまおう、それが正しいんだ!
冬はハグするにはいい季節だけど、夏に連れてってちょうだい
そうすると僕は幸せな雪だるまになれるさ
生きるのが辛いときは、夢に頼ろう
夏の太陽の下で熱気を追い払ってくつろごうよ
空は青くて、君らも僕の隣にいるんだ
僕が夏に凍り付いたことをやれる
夏の日に
夏が来る楽しみを歌う雪だるま。雪が解けてしまうなんて想像もしてないようですね。面白い歌ですが、歌詞をよく見ると意味深いです。冬というものは、厳しさや苦しみのメタファーです。またアレンデール王国(夏)で個性を押さえて生きたエルサ(冬)のことを考えるとエルサのマイノリティー的な位置を示すものでもあります。エルサは愛する妹や家族のために、自らを抑圧し、「いい子」であることを決めましたが、彼女の心の中はオラフのような夢を抱いていたのでしょう。自分の能力(冬、凍り付いたこと)を抑えなければならない夏に(アレンデール王国で)自分がやれることをやれる、言い換えればマイノリティーが受け入れられ溶け込まれるマジョリティーをエルサはずっと夢見ていたのです。これは、アナがエルサを連れ戻し、アレンデール王国を救う方法でもあります。マイノリティーを「間違ったもの」や「怖いもの」、「正すべきもの」として見なすのではなく、少数者たちの特別さ(能力と置き換えてもいいでしょう)を受け入れて、二つを混ぜて溶け込ませることです。

完成される「本当の愛」
雪だるまのオラフは夏が来ると溶けてしまい姿を消されるものです。しかしオラフは暖かいハグが好きな、夏が楽しみでしょうがない雪だるまです。夏を経験していない雪だるまだからこそ夏を夢見るのかもしれません。いや、オラフは夏が来ると自分がなくなることを解っている気もします。たとえば、「In summer」を歌っているときに、水たまり(puddle)の前で戸惑う場面(cuddleに合わせるなら、”put me in summer,and I’ll be a puddle(夏に連れてってくれたら僕は水たまりになるだろう)”にしたほうが自然だが、少し間を空けて、”I’ll be a happy snowman(僕は幸せな雪だるまになるだろう)”と歌っている)や「アナのためなら溶けてもいい」という場面がそうです。エルサを孤独なマイノリティーを考えたとき、アレンデール王国では珍しい冬の属性を持つオラフの夢は、マジョリティーに混ざりたいマイノリティーの切ない夢のようにも思えます。
また「愛の専門家」である友達のトロールたちにアナを連れていくクリストフの場面はどうでしょう。トロールの普段は丸い石の形をしていますから、クリストフは数多い丸い石(に見えるトロール)たちに声をかけていきますね。それを見たオラフは、クリストフを頭がおかしい人だと思って危機感を感じます。真っ白な顔になって(雪だるまだから白いのは当たり前ですが)、小声でアナに逃げるように言います。そしてオラフ自身は、明るい声で石ごろに挨拶をしたり声をかけて気をそらします。その間にアナが逃げられるように。アナを愛しているから。このように、オラフという存在は「犠牲」を前提とするキャラクターでもあります。犠牲によって幸せな雪だるまになれるオラフ。それは「本当の愛」が何かを端的に示す存在だったのです。
エルサは、アナのためだと思って心を閉ざしてきましたし、それを犠牲と見なすこともできるでしょう。しかしその犠牲は、アナの立場は考えなかった一方的な犠牲だったので反ってアナを傷つけて来ました。ここで私たちはもう一つの大事なメッセージを受け取ることができます。本当の愛は、犠牲でありますが、犠牲が愛ではないこと。愛は犠牲を伴いますが、また開かれた心と理解も前提にされなければならないということです。これは後ほど述べる予定である「開かれたドア」にもつながります。
「アナと雪の女王(Frozen)」レビュー/分析(シリーズ)
「Love is an open door」に込められた二つの意味
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昨日もリブログさせていただきましたが、くららさんがまた素晴らしい記事を更新されていたので
またまた、リブログさせていただきました(>_<)
私は雪だるまのキャラクターであるオラフをディズニー映画おなじみの
ちょっとお茶目でストーリーをより面白くさせてくれるかわいいキャラクターとしか捉えていませんでした。
くららさんはオラフ=エルサの真実の愛と捉える解釈はとても素敵だと思います。
そう考えると最初のシーンで雪だるまを作ること、「雪だるまをつくろう」と言うことそれ自体にすごく大きな意味があることに気づかされますね!
小さなアナとエルサが雪だるまオラフをつくり遊んでいるシーンは互いの愛の均衡がとれていますが、
アナを助けようとしてエルサが故意でないにしろアナを傷つけてしまい
それを受けて力を暴走させてしまうとき、一緒に作った雪だるまオルフが壊れていくのは
すれ違っていく二人の愛の暗い未来を予感しているのかもとくららさんのブログを読んで感じました。
マイノリティとマジョリティーについてなど!すごく考えさせられました。
特に大好きなのは最後の真実の愛についてです。
愛とは犠牲を伴うものです。しかし、真実の愛は犠牲だけでは成り立つものではないのだと最近しみじみ感じます。
なんだか長くなっちゃいましたね(^_^;)
とにかく、くららさんの記事を読んでみてください。
[…] クリストフもエルサと同じようにマイノリティーの一人です。『アナと雪の女王』において、マジョリティーは夏のイメージで表れています。(「オラフはなぜ夏に憧れるのか?」参照)彼は冬に属している人の中では珍しく冬の美しさを知っています。エルサが冬の美しさを知らず自己否定に陥っていたのとは違いますね。だからといって、クリストフがエルサより成熟しているとは言い難いです。クリストフは、冬の世界しか接したことがないように見えるからです。恐らく彼は家族もおらず、一人ぼっちです。友達と呼べるものは、トナカイのスヴェンしかいません。エルサがマジョリティーの中で生きるために自分を抑圧して生きるマイノリティーなら、彼は、マジョリティーの世界を知らずマイノリティーにとどまらざるを得ない人物なのです。 クリストフの歌を聞いてみましょう。 […]
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